The previous night of the world revolution

「…?」

「…」

恐らく向こうとしては、からかうつもりだったのだろうけど。

俺があまりにぽかんとしてるから、ちょっと反応に困っていた。

「何…何で風俗…?」

「何でってお前…」

戸惑ってるアドルファスって、物凄く新鮮だった。

「いや、行かないですよそんな…」

「…あ?何だお前童貞か?」

「どっ…」

誰か。誰かこの男にデリカシーという言葉の意味を。教えてやってはくれまいか。

俺のこの反応で、どうやら図星だと分かったらしく。

アドルファスは、にやー、と嫌な笑みを浮かべた。

「お前貴族の生まれの癖に、まだチェリー坊やなのか。どうなんだそれは」

「どうなんだって何ですか。良いじゃないですか別に!そういうのはあれですよ。好きな人とだけやるものですよ!」

「意外に純情だな。さすが童貞」

「あのな…。その辺にしておかないか。今の話を聞かれたら、ルシェ殿に斬り殺されるぞ」

謎の口論になりかけたところを、リーヴァがなんとも微妙な顔で止めてくれた。

確かに。こんな話姉さんに聞かれたらどうなることか。想像しただけで恐ろしい未来しか見えない。

「まぁ良い。やりたくなったら言えよ。適当な店紹介してやるから」

「それはどうもありがとうございますね。俺は不純異性交遊反対派なので、一生お世話になりたくないです」

俺をからかって何がそんなに楽しいのか、アドルファスはにやにやしながら去っていった。

…その、後ろに。

「…?」

一連の話を聞いていたのか、八番隊隊長のウィルヘルミナ・マリア・ハーシュヴァインが、眉間に皺を寄せてこちらを見つめていた。

違うんです。俺が悪いんじゃないんです…と。

弁明する前に、彼女はさっさと踵を返した。

…俺の預かり知らぬところで、俺の株がどんどん急降下している気がする。