The previous night of the world revolution

…今でも、夜中に思い出して魘される。




入学式を終えて、入学生は全員、学生寮に入った。

騎士官学校は全寮制で、どんなに家が近くにあろうと学生は全員寮に入らなければならなかった。

俺が宛がわれたのは、学生寮三階のN室。






…日常生活で、いきなり泥水をぶちまけられたら、どんな反応をするだろう。

想像と、現実の反応とはまた話は違うと思う。

朝までは新しかったはずの俺の制服は、たった数時間で泥水に浸された。

「…」

俺は驚いて、声が出なかった。

部屋に入るなり泥水をかけられたら、それは驚くだろう。

騎士官学校の学生寮は、部屋に入るなり泥水をぶっかけられる仕組みなのか?

本気でそんなことを考えた。

「…何、ですか」

俺は絞り出すように声を出した。

部屋に入るなり泥水をかけられる仕組みじゃないことが分かったからだ。

目の前に立っていた、五人の男が、犯人だと分かったから。

…醜悪な顔をした五人の男が。

「何ですか、じゃねーよ」

五人の内の一人が、嘲るように言った。

一人は、手に持っていたバケツを床に転がした。

「新入りへの歓迎会だよ。感謝しろよな」

「…」

これが、新入りへの歓迎?

五人の内の一人が、泥水に汚れた床を指差した。

「掃除しとけよ」

「…」

ぽたぽたと、俺の髪から茶色い水が床に落ちた。

「返事!」

「…はい」

俺は頷いた。

頷くしか、俺に選択肢などなかった。



…そんな訳で、俺の学生寮での初めての夜。

泥水浸しになった床を、這いつくばって掃除した。

その惨めな姿はまるで、これからの学園生活を暗示しているかのようだった。

…この学生寮は、俺にとって正に、悪夢だった。