「さすがに広いな、お前の家は…」

「まぁ、それだけが取り柄って感じですからね」

「それだけってことはないだろ」

その日。

約束通り、ルキハは俺の実家を訪れていた。

「あ、そうだ。これ手土産」

「わーい。ありがとうございます」

ルキハから渡された手土産。これ何だろうなぁ。

美味しいものだったら嬉しい。

「ちなみにプリンだからな」

「プリン!ルキハさん、あなたなんという罪深いことを」

俺の…俺のモーストフェイバレットフードを手土産に選ぶとは。

やることがイケメン過ぎてもう。

プリンと聞いて悶えている俺を、ルキハは白い目で眺めていた。

いち早く食べたいのだけど、ちょっと冷やした方が良いか…。

仕方ない。じゃあプリンが冷えるまでの間は、別のお菓子を食べよう。

「それじゃあ、ルキハさん。お菓子色々どうぞ」

「…」

この日の為に用意したテーブル一杯の洋菓子を見て、ルキハは無言であった。

何故黙る?

「お前、蛋白質は食わんが、糖分と脂質は過剰摂取するんだな」

「…」

「逆の方が良いと思うぞ。俺は」

「…ルキハさん。紅茶の砂糖は二つで良いですか?」

「話をすり替えるな。あと、砂糖は要らない」

砂糖要らないとは。渋くね?

仕方ない。ゲストが砂糖は要らないと言うなら、俺は遠慮なく三つくらい入れさせてもらうとしよう。

更に、ミルクもたっぷり入れる。やっぱり紅茶はこうでないと。

「甘過ぎるだろう、それ…」

「ロイヤルミルクティー的なあれですよ」

それに今日は、折角ルキハが来てくれたのだから。

少しくらい羽目を外しても良かろう。まぁ、紅茶を飲むときはいつもこんな感じだけど。

「…まぁ良い。それで?今日はお前しかいないのか?家族は?」

家族?

「いないですよ、今日は」

「忙しいのか?」

「さぁ」

「…さぁって…」

俺は家族が何をしていようが、大体どうでも良いのだ。