The previous night of the world revolution

そんな訳で、逃げ場のない俺は。

たった今卒業したはずの学校の稽古場で、物騒な剣を二本、両手で持って。

帝国で最も強いと言われている人間と、向かい合っている。

泣き出さない自分を、いっそ褒めたい。

だが、とりあえず落ち着け自分よ。相手は確かにチート級の実力者だが、俺は別に何も咎められることなんてしてないし、斬り殺されはしない。

うっかり骨を折られることもないだろう。多分。

この人が恐ろしいのは確かだが、俺はいつも、この人の次に恐ろしい姉さんに散々しごかれているのだし。

そう思うと少しは恐怖が薄れ…ない。やっぱり無理。

だってあの姉さんより強いって、それどんな化け物だよ。

今なら逃げられるか?いや、なんかそれも無理そう。

「さて…そちらから来るか?」

「…」

しかも騎士団長様、やる気満々。

駄目だこりゃ。

「…いえ、そちらから来てください」

こうなったらもう覚悟を決めるしかない。

どちらから斬りかかるかなんて、もう考えるまでもない。

こちらから斬りかかったって、簡単に受けられるのは分かっているのだから。

なら、向こうから斬りかかってきたのを受けよう。どうせあの人の攻撃を受けられなかったら俺の敗けなのだ。

「…随分自信があるようだな」

「そっちこそ。舐めてかかって学生に一本取られても知りませんよ」

こうなったら、挑発でも煽りでも何でもしてやる。引っ掛かってくれれば御の字。まぁ見るからに冷静さの塊だから、こんな安い挑発には引っ掛かりはしないだろうけど。

「…では、始めるか」

「…お手柔らかに」

と、言いたいところだが多分無理なんだろうなぁ。

遠い目でそんなことを考えた瞬間。

…今まで受けたこともないような、重い一撃が飛んできた。