稽古場に行ってください、と言われた俺は、ルキハと共に頭を捻りながら、ひとまず言われた通り稽古場に向かった。

が、ルキハはやや不満げで。

「何故俺までついていく?」

「だって一人だと不安だし…」

「…お前はいつからそんな寂しん坊になったんだ?」

俺はもとから寂しん坊だよ。

それに、その時点ではまだ、大したことではないと思っていた。忘れ物してるよ、とかそういう用件だと思っていた。

でも、稽古場に忘れ物なんてしてたっけ?

よく分からないけど…まぁ行けば分かるだろう。

確かに、行けば分かった。

自分が、とんでもないことで呼ばれたのだと。

「…えっ」

稽古場で俺を待ち伏せていた人間を見るなり、俺はびっくりして片足を引いてしまい、後ろにいたルキハに衝突した。

ルキハはめちゃくちゃ不満げだったが、こちとらそれどころではない。

ルキハも目の前にいるのが誰であるかに気づいて、息を飲んでいるのが分かった。

…そりゃびびる。俺でもびびった。

「…姉さん…?」

剣術の稽古場で待っていたのは、姉を始めとした、帝国騎士団隊長連の面々だった。

…どうやら、忘れ物ではなさそうだ。

「悪いな。式の直後に呼び出してしまって。学友達と積もる話もあるだろうに」

帝国騎士団長から直々に労りの言葉を賜り、俺はどう反応して良いのか困ってしまった。

「あ、いえ…。自分はあまり、学友達とは仲良くないもので…」

仲が良いのは、後ろにいるルキハだけでありまして。

「そうか。帰る前に、どうしても会っておきたくてな。時間を取らせてもらう」

「はい…」

「…それで、後ろの彼は?」

帝国騎士団長は、俺の後ろのルキハに目を向けた。

「えぇと…付き添いです」

「そうか」

ルキハに対してはそれほど興味はないのか、無害なら用はなし、とばかりに俺に視線を戻した。

ルキハ自身も、面倒事には我関せずとばかりにそっぽを向いていた。ちゃっかり逃げるな。

「それで、お前をここに呼んだ理由だが」

「はい」

「今ここで、俺と手合わせしてくれないか」

「………………ふぉ?」

思わず、素の反応が出てしまった。

どうでも良いけど、ルキハが後ろでちょっと噴き出していた。