海よりも深くて波よりも透明

「もっと…」

「また今度な?」



意地悪!



昨日あんなにしたのに!



「ほら、早く帰って寝ろよ~」



ケチ…。



夏葉の肩をパンチしてから車を降りた。



夏葉は笑ってたけど。



次会ったときは熱烈なチューかましてやる!



って、キス魔神はあたしじゃん …。



次の日学校でリアに愚痴った。



「のろけんな~」

「だってあんなに一昨日はキスばっかしてたのに昨日は全然なんだもん…」

「この前パパと鉢合わせしたじゃん? だから家の前は辞めといたか~、Sっぽいところがあるか~、調教されてるかのどれかだと思いまーす」



調教!?



「どういうこと?」

「おもちゃをねだる子供に、親が気まぐれに買ってあげたりあげなかったりすると、買ってくれるときのルールが子供はわからないから、子供はとにかくねだり続けるワガママな子になってしまうっていう心理学の研究があんだけど~」

「うん?」

「それと同じで、夏葉は穂風にそうやって気まぐれでキスしたりしなかったりして、穂風がいつもキスしてほしい子にしようとしてんじゃなーい?」



リアルがそう言ってキャハハと笑った。



あたしは調教されてたのか…。



って、そんなことある ?



結局、恋愛マスターのリア様の言うことについていけないまま、1ヶ月後、パーティーの日を迎えた。



パパとママも招待されてるから、2人と同じ車で行く。



パパとママの車で行ったら明らかに娘です!って言ってるみたいで嫌なんだけどね…。



本当は夏葉の車で行くはずだったんだけど、夏葉が仕事で1時間遅れることになっちゃったの。



しょうがないことだ。



今日のために用意した赤いドレス。



大人っぽさと華やかさがある感じ。



普段は基本的にすっぴんだけど、今日はメイクもちゃんとした。



早く夏葉に会いたいな。