海よりも深くて波よりも透明

穂風の顔を両手でつかんで、長めのキス。



ゆっくりと、唇を唇で挟み込むようにキスする。



もっと深いのがしたい。



けど、一気に色々しすぎるのは恋愛初心者の穂風にはハードだろ…。



穂風を大事にしたいから、焦らずにじっくり…。



俺が我慢できるかわかんねえけど。



顔を離すと、満足そうな顔。



もう一度俺にぎゅっと抱き着いた。



「好き」

「だろうな」

「夏葉は?」

「どう思う?」



俺がそう言うと、頬を膨らませた。



表情がコロコロ変わって面白い。



そんな穂風のおでこにまたキス。



「好きだ」



俺がそう言ったら穂風がにまっと笑って、背伸びをして俺に一瞬だけキスした。



「へへ」

「…そんな俺に可愛いとこ見せてどうする気?」

「あたしから離れられなくする気でーす!」



ったく…。



そんな風にしばらくいちゃついてから、陽が落ち始めた頃に車に乗って帰宅。



「夜、ナナで食ってくか」

「さんせ~」



湘南に戻ってナナの駐車場に止めた。



俺たちが付き合い始めたことはまだ海の人たちには言ってない。



「あたしたちが付き合ったって言ったらみんなどんな反応するかな?」

「さあな」



店のドアを開けて中に入った。



今日は土曜だからか人が多い。



知ってる人も結構いて、この前俺にアプリを進めてきたヒロさんもいる。



なんか嫌な予感…。



「おー、来たか」



最初に俺たちの来店に気づいたのはマスターのゲンさん。



俺たちはカウンターに座った。