「俺、英語分かんねえ。この子なんて言ってんの?」

「知らない方がいいよ…」



これ以上この2人を一緒にするのは危険だと判断して、早々に受付を済ませて2人を引き離した。



そしてはじまった大会。



サーフィンの大会では普通、2~4人で組を作られる。



その組はヒートっていうんだけど、ヒートごとに順番で制限時間以内に波に乗る。



あたしのヒートは一番最後。



サーフィン大会には共通ルールがあるけど、MSCは特別ルールが敷かれてる。



詳しい説明は省くけど、とにかく自分の好きなように乗れるのがMSCの好きなところ。



まず最初のヒートはセミプロの人たち。



そのヒートが終わったら愛姫たちの組だ。



愛姫のサーフは躍動感がある。



いつも何かと闘ってるみたいな感じ。



なんていうか、鬼気迫るものがある。



本人のキャラはのほほんとした感じなのに…。



ていうかむしろ、サーフィンがああだから自分のキャラクターはあんな感じでいられるのかも。



ロングボードは基本、のんびりとした波乗りだ。



でも、愛姫のロングは、まるでショートボードみたいに素早く動く。



うまい。



けど正直あたしもあのくらいはできる。



普通の大会で求められるのは、愛姫みたいな波乗り。



でも今日はMSC。



あたしの好きなロングの乗り方は、ロングらしいのんびりとした乗り方だ。



あたしは自分のやり方で勝ち取りに行く。



あたしのヒートになった。



慎重に波を見定める。



今日は、夏葉も見てるし、愛姫にも絶対に勝ちたい。



パパもいるから外野に舐められないようなパフォーマンスしないといけないし。



それに、これは言わばMAKANAのサーファーで誰が一番強いのかを競う大会だ。



負けられない。