「穂風のおすすめは?」

「えーっとね」



夏葉がスマホを手に持った状態のまま、そのスマホをあたしが操作する。



あたしの好きな邦楽がイヤホンから流れた。



変な感じ。



嬉しい時間。



でも、そんなあたし達に水を差すように、後ろから声をかけられた。



「遅くなって悪い」



その声に夏葉と同時に振り向くと、悠星くん。



ここまでか…。



悠星くんは不思議そうな顔であたしを見てる。



「なに? 穂風も撮影? 福田さんから特に聞いてないけど」

「ううん。あたしはたまたま…」



あたしたちは立ち上がった。



イヤホンを返す。



「じゃ、2人とも仕事頑張って」



そう言って海に入る。



悠星くんにとられた気分だ。



仕方ないけど。



岸辺の夏葉を時折ちらちらと見ながら波に乗っていた。



なんかたまに目が合う気がする。



そのたびに心臓が跳ね返る。



あたしの願望も交じってるかも…。



昼頃に波のサイズが小さくなってきたので上がることにした。



あ、悠星くんも上がるっぽい。



岸に出ると、夏葉がカメラを片付けはじめてた。



「終わったの?」

「ん。あとは明日かあさって、サイズが出てきたら水中で撮る」

「どこ?」

「んー。天気とコンディション次第」



まあそうだよね…。



またすぐ会えるといいな。



夏葉が、あたしと悠星くんを見た。



「飯行く?」

「行く!」



悠星くんもうなずいてる。



悠星くんはちょっと邪魔だけどまあいいや。



ご飯だけ食べてから解散。



あ~、幸せ。