試合がはじまった。



真恋のサーフはいわば優等生。



フォームも綺麗で、試合中は作戦を立てるのも上手い。



だから真恋の調子に乗せられないようにしないといけない。



あたしはあたしのサーフをするよ。



あまり良い波が来ない状態がしばらく続いた。



そろそろ何か乗らないと…。



小波を捕まえた。



これをさらっと乗りこなし、大きい技も入れてみた。



あんまり良い波じゃないだけに難しい。



それでも成功。



よし…。



それからはどんどん調子をつかんでいった。



周りのことも何も気にならない。



楽しい。



あたし、サーフィンが大好きだ。



そして、結果発表…。



《Gold, Japan, Mikaze Iwasaki(金メダル、日本、岩崎穂風)》



「夏葉!!」



真恋と大きく点差をつけて、オリンピックの試合に優勝した。



あたし、4年前の雪辱を晴らしたよ!!



「おめでとう、穂風。よく頑張った」



夏葉と抱き合った。



周りからも祝福の拍手とシャッター音が聞こえる。



最高の気分。



笑顔で表彰台に上がり、両手を挙げた。



「Hooo!」



数々声が上がる。



奥の方のメディア陣にいる夏葉が優しい顔を向けてくれた。



「世界最高のロングボーダーになった気分は?」



その日の夜、滞在先のホテルで夏葉が優しく聞いてくる。



「まだまだだよ。それにね…」



あたし、考えてることがあるんだ。



ワールドチャンピオンを確固たるものにした今。



あたしは新しいことに挑戦したい。



「あたし…ショートボード、本格的に始めてみる」



夏葉が驚いた顔であたしを見た。



「ロングボードでもショートボードでもあたしは世界最高のサーファーになってみせるよ」



韓国でミニとショートボードをやってみて思ったの。



あたし、まだまだ色んなことにチャレンジできる。



「応援してる」



夏葉がそう言ってあたしの髪の毛を撫でた。



夏葉がいるからどこまでも頑張れる。