海よりも深くて波よりも透明

「夏葉と久しぶりに会うのすごく楽しみにしてたのに…」

「そうだよな、俺も…」

「向こうが未練会って会いに来たってこと…?」

「そうらしい…」

「許せない…」



そう言って俺の胸をたたく。



そのまま泣く穂風の頭をとにかくさすり続けた。



「何にもしてないよね…?」

「あり得ない。向こうから来たのも全部あしらってたし…」

「話してるのもいや…」

「そうだよな、ごめん…」



それから泣きつかれて眠る穂風のそばにずっといた。



頭を撫でて目元を触って。



こんなに悲しませて本当に心が痛い…。



しばらくして、リアムから電話がかかってきた。



≪(今日も穂風の撮影無理そうか?)≫

「(ああ…悪い)」

≪(まあいいけど。にしてもチサキちゃん、まじでお前に全然未練あるわ)≫

「…」

≪(食おうとしたけど無理だった。一回ちゃんと話した方がいいんじゃね?)≫

「(話すのは穂風の気持ち考えたら本気で無理)」



そのとき、穂風が起き上がってきた。



そして、話を聞いていたのか、「貸して」と俺のスマホを取る。



「(そのチサキって女…今どこいるの?)」

≪(会うのか?)≫

「(会う…。会って、夏葉はあたしのだって言う)」

≪(オッケー。じゃあ呼ぶわ)≫



まじか…。



それからしばらくしてリアムから待ち合わせ場所の連絡が来た。



俺とほとんど口を利かない穂風は、俺に静かに「行こう」と言って席を立った。



待ち合わせ場所のカフェに入ると、先に千咲が来ていて。



穂風が俺の手をぎゅっと握った。



穂風と横並びで千咲の前の席に座る。



「彼女の穂風です」



穂風がそう言って軽くお辞儀をした。



「あ、元カノの千咲です」



『元カノ』の言葉に反応して、さらに強く俺の手を握る穂風。