~穂風~

夏葉が日本を出て2か月半が過ぎた。



季節は春。



休みの日の今日、朝起きたら、夏葉からいつも通りメッセージが送られてきてる。



開くと、魚が飛んでる写真。



『めっちゃいいの撮れた』



夏葉はこうやってほぼ毎日撮影した写真を送ってくれる。



海の写真だったり、現地の人だったり、食べ物だったりいろいろ。



あたしはそれを見るのが楽しみだ。



今日の魚の写真はなんか良いことありそうだからスマホのロック画面にしよーっと。



ちなみにホーム画面は振袖で夏葉とチューしてる写真だ。



夏葉は今カリフォルニアにいる。



カリフォルニアは愛姫の住んでいるところだ。



愛姫にも会うって言ってた。



夏葉に『ロック画面にしたよー』と返事をしてから布団から起き上がった。



夏葉が頑張ってるからあたしも頑張る。



そんなある日、あたしに写真集の話が来た。



20歳をテーマに、写真集を作らないかって。



写真集か…。



あたしは写真集は出したことがない。



今までも何回か話が来たことはあったけど断ってた。



そのときは変にプライドが高かったからね。



あたしは純粋にサーフィンをしたいからそんなのはいい、とか、親がすごいからお金になりそうでそんな話するんでしょ、とか思ってた。



でも、出してみるのもありかもしれない…。



あたしの新しい境地として。



夏葉も新しいことに挑戦しているから、あたしもやってみよう。



というわけでその話を受けることにした。



その日の夜、寝る前に夏葉に電話した。



≪写真集?≫



寝起きの夏葉の声。向こうは早朝だ。



「そう。何人かのクリエイターで撮ってもらうの。海外撮影とかもするよ」

≪へえ~、すげえな!≫

「ね、あたしも初めてのことでドキドキするけど…」

≪でも俺も撮りたかったわ、穂風の写真集の写真≫

「あたしも撮ってもらいたかったけど…。今度会うときに何枚か撮ってよ。それ載せてもらう!」

≪たしかに。ありだな≫



ドキドキするけどなんか楽しみになってきた!



「じゃあね、おやすみ。撮影頑張って~」

≪ん、また連絡する≫



電話を切って部屋の電気を消す。



夏葉に会えないのは寂しいけど、こうやって毎日お互いのことを報告し合えるのは嬉しい。



会えないのにもちょっとは慣れてきた。



めっちゃ会いたいけど…。



夏葉も頑張ってるもんね。



わがままあんま言わないようにする…。