海よりも深くて波よりも透明

「バレたか」

「あたしの家のやつ…? 夏葉、ショートボードやるの…?」

「お前がな」

「あたしが?」



びっくりした顔で俺のことを振り返って見る穂風。



「ボディーボードで何回か立ち上がろうとしてただろ」

「…」

「ロングはまだ抵抗あるかもしれねえけど、ショートならやるかもしれねえと思って」



俺の言葉に、穂風が俺にぎゅっとくっついた。



「夏葉ってあたしのことすごく大事に思ってるよね…」

「まあな」

「大好き…」



そんな穂風を抱きしめ返す。



しばらくそうしてたら、急に穂風が俺の腹をくすぐってきた。



「おい」

「へへ」

「へへじゃねえよ」



穂風の頬をつまむ。



楽しそうに笑う穂風が何よりも大事だ。



穂風が一番穂風らしく幸せにいてくれることが願い。



次の日から、穂風はショートボードを持って海へ行き始めた。



最初だけ少し緊張した顔つきだったが、あとはもういつも通り楽々と。



サーフボードに乗っている穂風がやっぱり一番生き生きしてる。



ショート始めて正解だったな…。



しかもやっぱりめちゃくちゃ上手い。



ロングではゆったりと穏やかに波に乗っていたが、ショートではリズミカル。



ショートでも相変らず、波と戯れてるような。



海も穂風のことが好きなんだと思う。



そんな穂風をカメラに納める。



今の俺にとって、穂風のこういう変化をフィルムに残すのが幸せだったりする…。



「やっぱ夏葉の写真って超いいね」



俺の家で、キッチンに立つ俺を待ちながらテーブルの上で俺の写真を眺めてる穂風。



「それやるよ」

「いいの? ほしい!」



我ながらよく撮れた穂風の写真をあげる。



穂風の表情がめちゃくちゃ楽しそうでそれもまた良い。