「いいか、よく考えてみろよ? 高校のときより、大学の方が時間多く取れてるだろ?」

「うん…」

「中学とか、高校のときでしっかり両立して何回もチャンピオン取ってんだ。お前は絶対できるよ」



穂風が俺の目を見た。



そんな穂風のおでこに一瞬キスを落として、もう一度頭を撫でる。



「がんばる…」



穂風が弱々しい声でそう言った。



「ん、応援してるから」

「うん。いつもありがと…」



それから穂風はちゃんと授業に出るようになった。



でも、相変らず余裕のなさそうな感じは変わらない。



このままだとまじで穂風が体おかしくしそうだ…。



「夏葉、かえろ!」



一応笑ってはいるけど。



穂風を家まで送り届けて、考えごとをしながら1人帰る。



穂風は過剰にプレッシャーを感じすぎるところがある。



本人は自覚してるんだろうか…。



数日後、穂風の授業終わりの時間に合わせて車で大学まで行った。



「えっ夏葉! どうしたの!?」



キャンパスから出てきた穂風が、嬉しそうな顔で俺に駆け寄る。



「今から予定は?」

「ジム行く!」

「じゃ、それまでドライブな?」



穂風を助手席に乗せ、車を走らせた。



穂風が俺のオーディオを勝手に操作して音楽を流す。



俺の好きなアーティストの曲。



穂風もいつの間にか好きになったらしい。



お腹が空いたと穂風が騒ぐので、途中コンビニに寄って買い物。



「たまには大学帰りこういうのも楽しいね」



そう言いながら穂風が運転してる俺の口にポッキーを差し込む。



楽しそうにしてる穂風に嫌な話をするのも心苦しい…。



口の中のポッキーを食べ終えてから、俺は口を開いた。



「穂風はさ、自分が絶対に1位でいなけりゃいけないって強く思ってるだろ?」

「え? うん。当たり前じゃん」

「俺はそれをすげえ心配してんの。穂風がそこにこだわりすぎてることに」

「は?」



穂風が怪訝そうな声を出した。