「キスで誤魔化すな…」

「お前ほんと可愛い。今すぐここで襲ってい?」

「何言ってんの…」

「ははっ」



穂風の頭をぐしゃぐしゃに撫でてから、もう一度穂風のことを抱きしめた。



穂風の背中をトントンと優しく叩く。



「夏葉はあたしの…」

「ん。ごめんな?」

「もういいもん…。夏葉の人生であたしが一番愛されてるから…」

「よく分かってんね」



嫉妬深くて可愛すぎる俺の彼女。



嫉妬されるのがこんな嬉しいとか初めての感情だ。



しばらくその場で抱き合ってから、復活した穂風は練習をはじめた。



穂風の出場は明日。



穂風が頑張ってるから俺ももっと頑張る。




そして、好調に成績を伸ばしていく穂風。



今回は、悠星もかなり調子が良い。



そしてびっくりなのが…。



「すごいイイカンジだったー!」

「やっぱ花枝さんのコーチングのおかげだな」



悠星と愛姫が片手でハイタッチしてる…。



アメリカ国籍だからアジア大会には出場できない愛姫。



アジア大会を見たいからと俺たちと一緒に来たわけだけど。



あんなに悠星のこと嫌ってた愛姫が、普通に悠星と仲良くしててすげえ驚いてる…。



「今日のレース終わったら行きたいオミセある!」

「おー、了解」



夜飯の約束まで…。



花枝さん、サーフィン教える力だけじゃなく人を仲良くさせる力もあんのか…?



しかも愛姫もちょっと日本語うまくなってるし。



「夏葉―、かえろ」

「ん」



穂風に呼ばれた。



今回は同じホテルの同じ部屋に泊まってる俺たち。



穂風は俺のことを安眠グッズにしてるらしい。



ホテルに戻ろうとしたら、美玲に呼び止められた。



「(夏葉、久しぶりに飲まない?)」



おい…。



わざとやってんな…。