女!?



あたしが眉間に皺を寄せながらスマホを睨むと、夏葉があたしのおでこに軽くデコピンした。



「姉だから」



あたしに一言そう言って、夏葉が電話に出た。



お姉さん…。



喋るわけでもないのになんか急に緊張!



確か夏葉の10歳上って言ってたよね?



「もしもし」

《あ、夏葉―? あんたさ、いつ実家帰ってくる予定?》



スピーカーホンにしてるわけでもないのに、お姉さんの声が電話越しによく聞こえてくる。



元気そうなお姉さんだ…。



「いや、特に帰る予定ねえけど…」

《なんかこの前お父さん会ったら、夏葉にってお金預かったからあんたに渡したいんだけど》

「別にいいから…。今度帰ったときまで取っとくか振り込んどいて」

《何言ってんのよ、早く渡したいから近いうちこっち来て。お母さんだってあんたのこと心配してんだから》



そこまで会話が聞こえてきたとき、ちょうど宅配のインターホンが鳴った。



夏葉は電話を続けたまま、あたしが「はーい」と玄関先に出て荷物を受け取る。



荷物を持って元の場所に戻ると、そのタイミングで電話越しから《…あんた、今女と一緒にいんの?》と聞こえてきた。



やばっ…。



悪いことをしてるわけでもないのに、緊張して心臓がひっくり返る。



「…いるけど」

《彼女? だったらちょうどいいからその子も実家連れてきな》

「何言ってんだよ…」

《分かった? 絶対だからね? 言うこと聞かなかったらどうなるか分かるよね?じゃ、あたしそろそろ行かないとだから》



そう言って一方的に電話が切れた。



嵐みたいだ…。



っていうか…。



「夏葉の実家? 行きたい!」

「聞こえてたのかよ…」

「全部聞こえてた!」

「姉ちゃん声でけえからな…」