~夏葉~

今日も海に出てる。



早朝から海で練習する穂風。



穂風の邪魔にならないように海へ入りつつ俺も波乗り。



昼くらいまで入って、俺はそろそろ仕事へ行く時間。



波待ち(※波がやってくるのを板の上に座って待つこと)をしてる穂風に近づいた。



「俺そろそろ行くから。多分そんな遅くはなんねえけど鍵渡しとく」



今日は穂風が俺の家に泊まりに来る日だ。


海パンのポケットに入れてた鍵を穂風に渡した。



ビキニの穂風はそれをしまう場所がないので、鍵についてる紐を自分の腕に巻き付ける。



「じゃあな、気をつけろよ」

「はーい! あとでね。お仕事頑張って!」



穂風に軽く手を振ってからインサイド(※岸側)へ向かった。



今日は東京で仕事。



写真の売り込みと、スポーツ新聞の編集部と情報交換。



数社回って写真の売り込みを終え、次はスポーツ新聞の編集部…。



情報交換と言いつつもただの飲み会という感じだ。



付き合いで行かないといけない。



車だから飲まねえけど。



「桐本くん~久しぶり! 元気だったかい?」

「お久しぶりです、原田さん」



編集部デスクの原田さん。



酔うと絡まれてめんどくさい。



まだ夕方だし、本格的な飲み会入る前に俺は帰るつもりだからどうか絡まれませんように…。



と思ったのに、さっそく酔って絡まれた…。



「桐本くんは若いのに本当によくやってるよね~」

「いえ、そんなことは…」

「そうやって謙遜して! ほら、飲みなさい。無礼講だよ。グラスどこ?」

「いえ、車なんで…」



俺の話を聞いてるのか聞いてないのか、グラスに酒をどぼどぼ次いで俺に押しつけてくる。



まじめんどくせえ…。



俺はグラスをテーブルにそっと置く。