海よりも深くて波よりも透明

穂風が小走りで進む。



リアルが俺のことを見た。



「ぽっと出のあんたより、あたしの方が穂風との時間長いんだからしゃしゃんな~」



はいはい…。



俺はリアルにとって穂風を奪ったライバルってことね…。



穂風とリアル、相思相愛じゃねえか。




それからしばらく文化祭を回り、一般客は帰る時間。



「今日何時まで?」



穂風に聞いた。



「学校自体は17時までだけどそのあとクラスで打ち上げ行く!」

「了解。帰り迎え行く?」

「やった! 来て!」

「ん。帰る時間連絡して」

「はーい!」



そんな会話を穂風としつつ、穂風の高校をあとにした。



さっきまでの非日常的な喧噪から一転、どんどんと辺りが静まりかえる。



「リアルとお前が仲良くしてて穂風が妬いてたぞ」

「それ聞いてお前はリアちゃんに妬いたんだ?」



だから妬かねえって…。



郁は楽しそうにしてる。



「リアちゃん、まじでびっくりするくらい気合うんだよな」

「穂風も、リアルがあんな風に誰かと仲良くなるの珍しいっつってたぞ」

「まじ? なんつーか、波長が同じっていうか、居心地良いっていうか…。恋愛とかそういうのとは全く別のところでそういうの感じる」



そんな風に言う郁はどこか嬉しそうだ。



良かったな…。