「おばあちゃん。ありがとうございます。」

亜季のその言葉に、老婆はうれしそうにもう一度笑う。


自分から踏み出さない限り、何も変わりやしない。

自分の心をほんの少しだけ柔らかくすれば、こうやって人の優しさに触れることができる。


溢れ出る涙を拭いながら食べるバナナの味は、この上もなく甘かった。