それと同時に、テツオの口からどす黒い血が噴出す。

その滴のいくつかが、テツオの左手を両手で包むように握る尾上の頬にはねたが、尾上は気にするそぶりも見せず、ただじっと苦しむテツオの様子を見つめている。


「まずいな。」

心電図のグラフを見ていた北村がつぶやいた。

尾上は何も出来ずに、ただテツオの左手を握る手に力をこめることしか出来ない。


「尾上君。減圧剤をたのむ。」

「あ…、はい!」

尾上は我に帰ると、病室の棚に急遽ずらりと並べられた薬品のひとつを手に取り、手早く注射器に注入した。

北村はそれを受け取ると、無数の注射を打って真っ黒になっているテツオの左腕にすばやく打った。