ふと気がついて、大隅は目の前の青年に尋ねた。

「ところで、君は何者だ。」


青年は微笑んだ。

「おれの名は土門。隔離地域に住んでいるただの会社員だ。出張でこっちに来ていたんだ。」

それを聞いて大隅は大声で笑った。


全く、一国の首長が聞いて呆れる。

一介の会社員にすら、現状を把握する能力がかなわないのか。


総理は取り囲む群衆を眺めながら、浮世離れしていた自分を恥じた。