「何がおかしい。わしは政権を失ったら、ほかには何もない男だ。それを守ろうとして何がおかしい。」

青年はあきれたように首を振った。


「あんたこのままだと、政権どころか命も失うよ。」

大隅は考えもしなかった青年の台詞に、思わず言葉を失った。


「大体、数十人の警備員で、どのくらいの時間、数万人を抑えられると思っているの?他の国で起こっているクーデターやテロ、日本で何故起こらないと思っているんだ?」

大隅ははっとした。


「政治家」ではなく「政治屋」であることを自覚する大隅は、自分の言動が支持率に対し、どのように影響を与えることだけを考えて生きてきた。

だからこそ無策と言われながらも、「病原菌」の拡大という決定的な打撃を避けるために、一部の地域の中に菌を封じ込めてきたのだ。