男は喚声を上げると、そのロープを掴んで上り始める。

それを見た民衆も、その後に続こうと殺到した。


そんな光景を見ていたテツオの視界の隅に、光るものが映った。


「やめろ!危ない!」

反射的に叫んだテツオの言葉の語尾に重なるように、冷え切った銃声がこだました。

その銃声が1度、2度とする度に、ロープに殺到した民衆たちが倒れていく。


「やめてください。病原菌の正体が判明するまで、金網の中で待機していただくようお願いします。でないと、再びやむをえなく発砲することになります。」

「何だと!警告もなしに撃ちやがって!」

「あの人たちを見殺しにするの!?」

金網の向こうで、民衆たちが私服を着た男に詰め寄った。


その直後、テツオは思わず目をそらした。


再び、無情な銃声がこだまする。

(狂っていやがる・・・。)