「君に来てもらったのは他でもない…。」

「…はい。」

尾上は北村のあまりの真剣な表情に、思わず息を呑んでそう返事をした。


日頃何があっても動かない北村のその表情に、明らかなためらいが読み取れる。


「黒い斑点と高熱をもたらす、あの忌々しい病原菌への対処法は見つかったか。」 

そう神経質そうに北村は尋ねた。


「…いえ。」

「…そうか。」

北村は大きくため息をついた。

そして座ったまま椅子をくるりと回すと、しばらく窓の外を眺めていた。




外では、雨が静かに降っている。

その雨の中、多くの人々が自分たちの診察を待っている。