翌朝、早起きをしたルイーズは、屋敷の庭園を見て回っていた。

 季節は夏ということもあり、辺り一面には寒色系の花たちが涼し気な姿で咲き揃っている。その中でも、東屋前のエリアでは、楚々たる風情の花たちが、清々しい朝の光に照らされながら揺れている。これは庭師トムの力作である。

 ルイーズが庭へ行くと、トムは既に作業を始めていた。

「おはよう、トムさん」

「おはようございます、ルイーズお嬢様。何かご入用ですか?」

「ええ。この薄紫のカンパニュラを、お母様の部屋に飾りたいの」

「わかりました。用意して、マーサさんに渡しておきます」

「ありがとう。よろしくね」

 朝食の時間が近づいているため、ルイーズは食堂に向かう。食堂に入ると、エイミーが席に着いていた。顔色も良いため、ルイーズはほっとした表情を見せた。

 父親は仕事で、リアムとミシェルはまだ眠っているようだ。

「お母様、おはようございます。今日は起き上がっても大丈夫なのですか」

「おはよう、ルイーズ。今日は気分がいいの。それに、あたなたがくれたカンパニュラで、お部屋がとても明るくなったわ。ありがとう」

「それは良かったです」

「このハーブウォーターも美味しいわね」

「昨日、エリーからフレッシュハーブをもらったんです」

「そうなの。エリーちゃんにお礼を伝えてね」

「はい」

 窓から差し込む光の中、母親と過ごす穏やかな朝に、幸せを感じるルイーズだった。