捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

「ここの最上階が展望台になっているから、見に行かないか?」
「わ、行きたいです!なんかデートみたいですね」
「知らなかった?今日はデートだよ」

右手を取られて歩き出す。
穂高さんの大きな手に包まれて、とても安心する。この人と一緒にいたら、世の中の嫌なことなんてすべて吹き飛んでしまうんじゃないかっていうくらい、気持ちが楽になる。なんて贅沢なんだろう。大好きで大好きでたまらない。こんな気持ちにさせてくれることが奇跡みたいに尊い。

秋めいて陽が落ちるのが早くなったからか、夕暮れ時なのにもうだいぶ薄暗い。地平線にオレンジの太陽が沈んでいくのがわかる。街にはネオンが灯り、夜の輝きが現れ始めた。

すごく綺麗で宝石みたい。
こんな景色を見られる日が来るなんて思ってもみなかった。

「穂高さん」
「ん?」
「大好き」

心からの気持ちを伝えたら、「俺も」と呟きと共に、柔らかく触れる唇。
コツンと当たる眼鏡に、お互いくすっと笑みが漏れる。

「夜はどうする?このホテルでディナーでもと思ったけど、お腹すいてる?」
「実はお昼が遅かったからか、まだあまりお腹すいてなくて。お家で何か作ってもいいですか?」
「俺はいいけど、作るの大変だろ?」
「料理しないと腕がなまっちゃうので」
「わかった。じゃあ、帰ろうか。家のほうがいっぱいイチャイチャできるし」
「い、イチャイチャ?」

昨夜のことがよみがえる。思い出しただけで身体の奥がきゅっと疼いて急にドキドキと心臓が激しく脈打った。

「ははっ。真っ赤な顔」
「だ、だって……!」
「莉子は想像力豊かでいいね」
「な、ナニモソウゾウシテイマセン」
「そう?俺はあんなこともこんなこともしようと思っています」
「ひぃぃっ」
「何を想像したの?莉子のエッチ」
「してないっ!してないですからっ!穂高さんの意地悪!」

繋いだ手をブンブンと振るけれど、穂高さんはあははと笑いながらさらに固く握りしめた。離さないとばかりに引き寄せられて、ときめきがはち切れそう。

こんな風にデートして、笑い合って、一緒に帰る。
なんて幸せなんだろう。