「じゃあ三人が結託していたってことですか?」
「いや、それぞれが自分の利益のために全員を騙していたということだよ。久保雄一は女遊びをしながら大金を手に入れるため。間瀬桃香は桐谷ルイに貢ぐため。三隅新太は大金欲しさに使えるものは使う、といったところかな」
「そう……だったんだ……」
何も知らなかった。雄一が女遊びが激しいことも、桃香ちゃんが雄一を好きではなかったことも、何一つ気付けなかった。私はもうずいぶんと前から、いろいろなことに騙されていたんだ。
「……私、人を見る目がないですね」
「騙されていたことは残念だけど、莉子さんはちゃんと人を見る目があるよ。結婚相手に俺を選んだ。それだけで十分人を見る目があると思わない?」
自信に満ち溢れた穂高さんから目が離せない。選んでくれたのは穂高さんの方なのに、まるで私の手柄のような気にさせてくれる。なんて大きい人なんだろう。
「そこで一生分の運を使っちゃったのかもしれません」
「だったら、一生大切にする」
ごくっと息をのむ。体の奥から熱が湧き上がって胸が締めつけられた。穂高さんを好きな気持ちが溢れてくる。だけど言葉にはならなかった。代わりにぽろりと涙が溢れる。
「ほら、おいで。莉子」
穂高さんが困ったように両手を広げた。泣く場所はここだよって、教えてくれる。私は素直にそれに従う。
ふんわり抱きしめてくれる温かさも、優しく頭を撫でてくれる心地よさも、なにもかもが嬉しくて、やっぱり私は一生分の運を使い果たしたんじゃないかと思った。むしろ、穂高さんに一生分の運を全振りしたのかもしれない。
「向こうのアパートは一週間以内に退去するように久保雄一と取り決めたから。その後に、荷物を取りに行こうか。俺たちの新居も、探さないとね」
「え、お引越しですか?」
「だってここじゃ、狭いだろ?」
「私には十分広いです」
「そう?じゃあ、ゆくゆくは、だな」
“ゆくゆくは”に、穂高さんとの未来を想像してもいいのだろうか。本当にずっと一緒にいてくれるの……? 期待と不安が入り混じる。
「いや、それぞれが自分の利益のために全員を騙していたということだよ。久保雄一は女遊びをしながら大金を手に入れるため。間瀬桃香は桐谷ルイに貢ぐため。三隅新太は大金欲しさに使えるものは使う、といったところかな」
「そう……だったんだ……」
何も知らなかった。雄一が女遊びが激しいことも、桃香ちゃんが雄一を好きではなかったことも、何一つ気付けなかった。私はもうずいぶんと前から、いろいろなことに騙されていたんだ。
「……私、人を見る目がないですね」
「騙されていたことは残念だけど、莉子さんはちゃんと人を見る目があるよ。結婚相手に俺を選んだ。それだけで十分人を見る目があると思わない?」
自信に満ち溢れた穂高さんから目が離せない。選んでくれたのは穂高さんの方なのに、まるで私の手柄のような気にさせてくれる。なんて大きい人なんだろう。
「そこで一生分の運を使っちゃったのかもしれません」
「だったら、一生大切にする」
ごくっと息をのむ。体の奥から熱が湧き上がって胸が締めつけられた。穂高さんを好きな気持ちが溢れてくる。だけど言葉にはならなかった。代わりにぽろりと涙が溢れる。
「ほら、おいで。莉子」
穂高さんが困ったように両手を広げた。泣く場所はここだよって、教えてくれる。私は素直にそれに従う。
ふんわり抱きしめてくれる温かさも、優しく頭を撫でてくれる心地よさも、なにもかもが嬉しくて、やっぱり私は一生分の運を使い果たしたんじゃないかと思った。むしろ、穂高さんに一生分の運を全振りしたのかもしれない。
「向こうのアパートは一週間以内に退去するように久保雄一と取り決めたから。その後に、荷物を取りに行こうか。俺たちの新居も、探さないとね」
「え、お引越しですか?」
「だってここじゃ、狭いだろ?」
「私には十分広いです」
「そう?じゃあ、ゆくゆくは、だな」
“ゆくゆくは”に、穂高さんとの未来を想像してもいいのだろうか。本当にずっと一緒にいてくれるの……? 期待と不安が入り混じる。



