捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

料理も出来上がり、洗濯していたシーツも取り込んで準備万端な頃、ちょうど穂高さんが帰ってきた。

「ただいま。遅くなってごめん」
「いえ。おかえりなさい」

穂高さんは朝から晩まで働いたのに、スーツの寄れもなくきちんとしている。ネクタイを緩める手の動きがかっこよくて、思わず見惚れてしまう。

「美味しそうなにおいがするね」
「あの、よかったらご飯、食べませんか。お口に合うかわからないですけど……」
「ほんと?めちゃくちゃ嬉しい」

穂高さんは嬉しそうに笑うと「ちょっと待ってて」と着替えに行く。私はその間に、テーブルへ料理を並べた。

何を作ろうか悩んだけれど、以前ソレイユで好評だった肉じゃがと五目ごはん、それからブリの照焼に小松菜のおひたし。食器があまりなかったからちぐはぐな盛りつけだけど、美味しくできたと思う。

「わ、すごいな。これ全部莉子さんが作ったの?」
「はい。勝手にキッチン使っちゃってごめんなさい」
「それは好きに使えばいいけど……なんか食べるのがもったいないな」
「いえいえ、食べてください。あの、これはせめてものお礼なんです。私、これくらいしか返せるものがなくて……」

と、ふいにぽんと優しく頭を撫でられる。穂高さんと視線が交われば、これでもかと優しく微笑んで「ありがとう」と言ってくれて――

嬉しさと穂高さんのかっこよさに頭が熱暴走を起こしそうなくらい、胸がきゅんとなってどうしようもなくなって、私は両手で顔を覆った。

「どうしたの?」
「う」
「う?」
「嬉しくて。どうしよう」

嬉しいだけじゃなくて、やっぱり穂高さんのことが好きだと思ってしまって、困る。こんな利害の一致婚なのに、彼を好きになったら自分が苦しいだけなのに、どんどん想いが膨らんでいく。

なのに――

「俺も嬉しいよ。莉子さんと結婚できて幸せ」
「〜〜〜!」

そうして、私をふわりと包み込むように抱きしめてくれるものだから、もう完全に思考回路がショートした。勘違いするからやめてほしい。ううん、やめないでほしい。もう、どうしたらいいかよくわからない。ただ、幸せだと思ってしまった。