捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

結愛ちゃんとたくさんお喋りをして、気持ちがすごく楽になった。雄一と桃香ちゃんのこと、これからのソレイユのこと、ぐちゃぐちゃに悩んでいることがあるだなんて思えないほど、目の前が晴れ渡っている。グジグジ落ち込んでいる暇はない。私も前を向いて頑張らなくちゃ。

「今度は旦那さん紹介してよね。写真送ってくれてもいいけど」

ふふっと笑う結愛ちゃんに、「そうだね」と曖昧に返事をして別れた。

晴れ渡る気持ちの中、湧き上がってくる罪悪感に胸がきゅっとなる。それを振り払うようにスーパーでたくさん食材を買った。せめてものお礼で、穂高さんに美味しいご飯を食べてもらおう。今の私ができることといったら、それくらいしかないのだから。

合鍵を使って再び穂高さんのマンションへ戻る。それがなんだか特別感があるような気がして嬉しい。少しは穂高さんに信頼されているのかも、なんて勝手に良いように考えて気分が上がる。

料理は毎日していた。ソレイユでも自宅でも。ソレイユではお客さんが「美味しい」って食べてくれたけど、家では「美味しい」なんて言われたことがない。雄一は文句しか言わなかったし。でも穂高さんなら……。

「きっと大丈夫よね?」

美味しいって言ってくれるといいなと思いながら、黙々と料理に取りかかった。誰かのために料理をすること、美味しく食べてくれることを想像しながら作るのはとても楽しい。やっぱり私はカフェで働くのが好きなんだろうなと改めて実感した。