捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

「どうした?」
「あ、うん。おじいちゃんが入院したみたいなの。それでおばあちゃんが困ってるって」
「それは大変だな。今から行くか?」
「うん。ちょっと様子見てくるよ」

さっき帰ってきたばかりだけれど、急いで出かける用意をする。

祖父は大病を患ってから体調を崩しやすく、よく病院のお世話になっている。けれど救急車で運ばれることは今までなかったから、とても心配だ。祖母の電話の様子では、深刻な様子ではなかったけれど……。

「莉子、おばあさんも心細いだろうから今日は向こうで泊まってきたらどうだ?」
「うん、そうだね。そうしようかな?」
「仕事のことは気にしなくていいよ。おじいさん、心配だな。人手が必要なら俺も行くから、連絡してくれ」
「わかった。ありがとうね」

泊まるかどうかはわからないけれど、ひとまず一泊分の荷物をささっとカバンに入れて家を飛び出した。相変わらず雨はザアザアと降っていて、足元が悪い。傘を片手にバス停まで急いだ。

どんよりとした雲が私の心も重くする。祖父に何かあったらどうしよう。ざわつく胸を抑えながら、これからのことを考える。

祖母もだいぶ年をとって足腰が弱い。祖父の入院につきっきりというわけにもいかないだろうし、毎日病院に通うのも大変なことだ。やはり私がサポートしていかないと成り立たないだろう。

雄一が、ソレイユを売って新しいカフェを建てようと言った。そんなこと絶対反対だと思ってはいるけれど、もしかしたら今の生活を見直すべきときがきているのかもしれない。

「……そういう巡り合わせなのかしら」

ふと、そんなことが頭をよぎった。