霞くんのそばにいたいと必死に足を動かし、たどり着いたのは大きな屋根の下。
運動部の部室として使われている棟の軒下。
首を左右に回してみたが、昼休みで雨が降っているということもあり生徒も先生も誰一人見当たらない。
霞くんは持っていた傘の雨を払い、傘を閉じると、ベンチの横に立てかけた。
「流瑠さんありがとう」
真っ赤な傘に向かって、優雅に微笑んでいる。
いまのは、傘を貸してくれたことへのありがとうなのか?
確かにこの傘がなかったら、僕たちはずぶ濡れだったに違いない。
それとも、僕とあいあい傘をさせてくれたことへの感謝?
なーんて、後者はないか。
僕の告白はスルーされた。完全に振られちゃったわけだし。
でもわからないのは、背後から抱きしめられたこと。
一度目は、飛んできたテニスボールから僕を助けるためだからわかるとして。
じゃあ二度目は?
僕を抱きしめる必要性なんてなかったでしょ?
二人だけになれる場所に行こうと肩を抱かれてまでこの軒下に連れてこられた理由も分からない。
得意の作り笑いが浮かべられないほど、僕はいま困惑をしている。



