過去と今の違いに心臓が痛む。
唇をかみしめていないと、涙腺が緩みそうになる。
霞くんが僕から距離をとろうと後ずさりした直後だった。
重たい空気を一掃するように、流瑠ちゃんが笑い声をあげたのは。
「アハハ、何その幼稚な言い合い。低レベルすぎなんだけど」
お腹を押さえながら笑う流瑠ちゃんの目には、うれし涙らしきものが光っている。
「小5の時も二人が言い合いしてるのを見たんだよわたし。ダブルスの試合で二人が負けちゃったあと、自分のせいで試合に負けちゃったってお互い譲らなくて。テラっちは霞くんのプレイは完ぺきだった、全部僕のせいって泣いてたし。霞くんはテラっちがエースを決められるように相手を誘導できなかった、自分が未熟すぎだから負けたって謝ってて。ほんとどっちも自分のせいって引かなくて。テラっちはわんわん泣いて、霞くんはごめんごめん言いながらテラっちを抱きしめて。その時思ったんだ。お互いが相手のことを大事に思っている素敵なカプだなって」
流瑠ちゃんは目じりの涙を指で拭い
「私を腐女子にした責任、ちゃんととって欲しいなぁ。でもまぁ、妄想だけでニマニマできる幸福体質に変えてもらったし、二人には感謝しているけどね」
ポニーテールを楽しそうに揺らしている。



