「なんで萌黄くんは、俺が高熱を出したことまで知ってるの? 中学はクラスが違ったのに」
「霞くんの情報は筒抜けだからね。中学の時も霞くん好きの女の子たちが、校内のいたるところで霞くんの一挙手一投足にキャーキャー言って盛り上がってたんだから。そりゃ僕の耳にも入ってくるよ!」
「萌黄くんだって中学の修学旅行の直前に風邪をひいて、就学旅行に行けるかどうかクラスメイトにすっごく心配されていたでしょ!」
「でもすぐに治った! クラスのみんなとシカにせんべいをあげれたもん!」
お互い顔に笑みがない。
まるで子供の口ケンカだ。
むきになって言葉をぶつけてしまう。
小学校の頃もこういうことがよくあった。
王子様みたいにおっとりと微笑む霞くんなのに、僕の体調についてはお母さんよりも心配して口出ししてくるの。
それを僕が反発して。
でも霞くんもひかなくて。
あの頃はどうやって、些細ないざこざからベタベタに仲がいい親友に戻っていたんだっけ?
思い出せないな、もう6年も前のことだ。
あの頃はよかったな。
どれだけケンカをしても【霞くんの隣】という特等席が、僕のためだけに用意されていたんだから。



