真っ赤な折り畳み傘は、布の面積が小さめだ。
お互いの肩が触れ合うぐらいくっつかないとだけど、恥ずかしすぎて霞くんとの距離が詰められない。
たったリンゴ3個分くらいの空間なのに、ドキドキに襲われ埋められない。
でも霞くんが雨に濡れるのは許せなくて……
僕は短めな腕を精一杯伸ばし、前に立つ霞くんの真上にくるように真っ赤な傘をずらす。
「萌黄くんが濡れてる、傘は俺が持つ」
男気のある声に、傘をさらわれてしまった。
「僕のことは気にしないで」と慌てて訴えてみるも
「気にするよ、萌黄くんに風邪をひいたられたら俺が困る」と、霞くんの綺麗な眉が吊り上がって。
「僕は平気だよ!」
今度は僕が傘を奪い、背が高い霞くんの上に布地を広げることに成功したのである。
「やっぱり萌黄くん、俺が濡れないように傘をさしてくれてる」と、霞くんは重いため息を一つ。
僕まで口調が荒くなってしまうのは、霞くんに普段のおっとりが消えてしまったから。



