僕たちも屋根のあるところにかけ込んだ方がいい。
今は傘がなくて平気だけど、雨あしが強まる可能性は否めない。
そう思った矢先、流瑠ちゃんがニヤリと目じりを光らせた。
「こんなこともあろうかと」
パンパンに膨らむななめがけバックから取り出したのは、折り畳み傘? しかも2本も。
柄を伸ばし布地を広げた流瑠ちゃんは、一本は自分の肩に、もう一本を僕の手に握らせてきた。
「なんで流瑠ちゃん、傘なんて持ってるの?」
「フフフ。このバックの中にはね、腐女子の妄想を現実にするためのアイテムが詰め込まれているんだよ」
……そうですか。
親友歴2年以上なのに、まったく気がつきませんでした。
「テラっち、霞くんが濡れてるよ。もっとくっつかないと」
それって相合傘をしろってこと?
目を見開いた僕の言いたいことを察知して、流瑠ちゃんが勝ち誇った顔で頷いた。
無理だよ、霞くんに近づくなんて……
でもでも、僕がちゃんと傘をささなければ霞くんが濡れちゃうよね?



