地雷カプブルー


 「流瑠ちゃん、霞くんに変なこと言わないで」

 「どうしよう、私が推しカプの恋のキューピッドになれちゃったかも。キャー!」


 浮かれてる。

 はしゃいでる。

 僕の声が全然届いていない。

 霞くんに口元を読まれないように背を向け、もう少し声を張る。


 「僕は霞くんに嫌われてるの、霞くんの好きな人は奏多くんなの」

 「そんなことないって。腐女子の色メガネで見ると、霞くんは絶対にテラッちが好きだよ」

 「それは流瑠ちゃんが思い込みたいだけでしょ」
 
 「商業BLだと、あっ売ってるマンガってことね、男っていう生き物は好きな相手ほど冷たい態度をとっちゃって、でも好きで、大好きで、俺だけのものにしたいのにって嫉妬がたまって、最後爆発なんだよ。今度マンガ貸そうか?」

 「流瑠ちゃんはBLマンガの世界の中だけで夢を見ててよ」

 「私の親友なのにテラッチはわかってないな。商業BLマンガの萌えキュン度はコンロの火レベルなの。現実男子たちの二次創作はキャンプファイヤー……じゃ火力弱いか。天まで上る火柱なの!」

 「なんの話してるの?」

 「私たち腐女子はね、妄想に妄想を重ねて『このカプいい』『このシチュおいしい』と発狂する生き物なんだからね!」