霞くんが戸惑っているから、流瑠ちゃん黙って、静まって、お願い。
僕は自分の口の前で指バッテンを作ってはみたが、興奮気味の流瑠ちゃんの瞳には映っていないみたいだ。
「小5で霞くんとテラっちがテニスの試合に出たのを、たまたま見てたの私。それからずっと私の中でカステラが推しカプで。二人のいろんなことを想像するともうダメで。高校に入って二人が同じ高校だって知った時の私、ヤバかったな。早く二人がくっついて欲しくて。どれだけ二人の妄想に時間を費やしたともう?高1の初テストで成績悪すぎたの、妄想のせいだからね。あっ、ついに言っちゃった。テラっち以外についに暴露しちゃった。霞くんお願い、みんなには黙ってて。私が商業BLよりリアル男子の二次創作を楽しむ腐女子だってこと」
「よろしくね」と霞くんの手を解放した流瑠ちゃんは、好きを語りつくしたような満足げな表情でニヤついている。
霞くんは宇宙人に遭遇した時のような固まり方。
色っぽい目をしばたかせ、理解不可能と言いたげな顔で首をかしげて。
何か返事をしなきゃと追い詰められたのかな?
「腐女子? そうなんだね、うんうんいいと思うよ、人間好きに生きれば」
と、乾いた笑いをこぼしながら頷いている。
僕は流瑠ちゃんの腕を引っ張る。
霞くんから距離をとることに成功し、流瑠ちゃんだけに聞こえるようにコソコソ声をこぼした。



