どうやら彼女のテンションは、ハイの極みに到達してしまったもよう。
「夢が叶ったよぉ。攻めが騎士顔負けの萌えシチュを再現してくれたよぉ。ほんとヤバい、ほんと無理」
と騒いでは、やけに膨らんだ斜めがけバックを膝に乗せ、うずめた顔を横に振っている。
現実が見えなくなってしまった親友を助けなきゃという使命感が湧き、僕は流瑠ちゃんの耳元に唇を近づけた。
「流瑠ちゃん、みんなに見られてるよ、腐女子だってバレちゃうよ」
腕を引っ張り、流瑠ちゃんを立ち上がらせる。
テニスコートの周りには今もたくさんの女子が群がっていて、僕に刺さる視線が痛いこと痛いこと。
好意的な目なのか攻撃的な目なのかは、判断が難しいところ。
腐女子ちゃんは一度興奮しだすと、簡単にはムネキュンが静まらない生き物なのかもしれない。
そして行動力もとんでもない。
流瑠ちゃんは霞くんの顔がのけぞるくらい至近距離まで霞くんに詰め寄ると、霞くんの手を両手で包みブンブン振り始めた。
「私、カステラが最推しなの!」
目がキラキラな流瑠ちゃんとは対照的
「……あっ、うん……確かにカステラっておいしいよね……」
霞くんは引きつり笑顔。
「なんでお菓子の方に行っちゃうかな。違うでしょ!カステラって言ったら霞くんとテラっちのことでしょ!」
「俺たちのこと?」



