「一部始終見てたけどさ、飛んできたテニスボールから姫を守ったって、カスミの王子様伝説がまた一つ増えるんじゃねーの? あほくさ」
テニスラケットを肩に担いだ奏多くんの言葉に、ようやく僕はこの状況を理解した。
そういうことだったんだ。
霞くんに抱きしめられてドキドキに襲われていたけれど、霞くんは僕がボールに当たらないように腕を引っ張てくれただけなんだ。
とっさのことで覚えていないけれど、もしかして僕から霞くんの胸に飛び込んじゃったのかな?
抱きしめられたというのも僕の思い込みで、ただ霞くんの腕が僕に当たっていただけだったのかも。
そうだよ、絶対に。
だって霞くんは僕のことが嫌いなんだもん。
6年間も無視され続けてきたんだもん。
さっきだって、僕と奏多くんが話していただけで嫉妬していたし。
それくらい奏多君のことが大好きってことだよね?
そういうことだよね? 霞くん。



