清涼感のある心地い匂いが鼻腔をくすぐり、ハートまでくすぐってくる。
極上の毛布に包まれているようなぬくもりに溺れそうになって、息苦しくて。
「大丈夫だった? 輝星」
優しさと焦りが溶け合うような甘い声が、僕の鼓膜を揺らした。
さらに強く抱きしめられ、沸騰しそうなほど血液の温度が上がってしまう。
抱き好きな人に呼んでもらえた……
輝星って……
嬉しい……
湧き上がる喜びは涙腺を弱くするらしい。
感極まって瞳に滲みだした雫。
霞くんの胸に頬を当てていると、彼の心拍がダイレクトに伝わってくる。
ものすごく早いビートを刻んでいるような。
僕に負けないくらいの駆け足気味。
この身体現象が、僕を抱きしめていることによるドキドキだったらいいのにな。
霞くんの胸板から頬を外し、僕は緊張気味に視線を上げる。
騎士のように凛とした顔で遠くを見つめていた霞くんが、視線を下げた。
至近距離で目が合う。
視線が絡みあう。
霞くんの綺麗な瞳に、この僕だけが映っている。



