悲しみが僕の右腕の傷跡をつつく。
痛むのは右腕なのか、ハートなのか、それとも両方なのかわからない。
ジャージの長袖に覆われた腕を体に巻き付け、うつむいた時だった。
「危ない!」
切羽詰まったような声が僕の耳に突き刺さったのは。
何が起きたのかわからなかった。
叫んだのは霞くんで間違いない。
大好きな声が耳に届き肩を跳ね上げはしたものの、状況を確認する時間は0.1秒もなくて。
誰かに腕を引っ張られたと思った直後、僕の体が何かにすっぽりと包まれたんだ。
動けない。
今この瞬間も。
甘い熱に体中が縛られ、心まで捉えられてしまったから。
僕の右頬には固いものが押し当てられていて、ドクドクと響くような心拍が心地いい。
腰に巻きついているのは、程よく筋肉がついた腕。
顔を守るように僕の片耳に大きな手の平が添えられていて、後頭部に当たっているのは顎……だよね?



