嫌いな僕とテニスのペアを組むなんて、霞くんは嫌だよね。
練習すらしたくないと思うんだ。
でも霞くんは優しいから、当分のあいだ学校に来れない小倉くんのために、僕とテニスをしたくないとは絶対に言わなくて。
今もお兄さんみたいな穏やかな笑顔で、僕に微笑みかけてくれている。
「萌黄くんは、テニスをやっていたりするんだよね?」
またしても苗字呼び。
話し方も他人行儀だ。
心無い笑顔の花が咲き誇っていて、壁を作られているのがまるわかり。
「週に2回くらい、父さんと黄色いボールを打ち合ったりしてるよ」
「頼りにしてるね」
「あっ、うん」
髪が躍るほどオーバーに頷いた僕だけど、うまく笑顔が作れない。
霞くんが僕の目の前で咲かせている笑顔の花は、仲が良かった小学生のころとは全く違う色どりだ。
僕が得意としている作り笑いと同じだと、簡単に見破ってしまった。
テニスコートの周りを囲んでいる女子たちの目があるから、とりあえず僕に微笑んでいるだけ。
本当は今すぐ僕の前から消えたくて、僕なんかと関わりたくもないに決まっている。



