逃げたい。
教室にこもりたい。
でも熱血ワイルドの奏多くんは、なぜか僕を逃がしてはくれない。
「太陽出てないし、これはもういいよな」と僕の頭からキャップを奪うと、自分の頭にキャップをかぶせて僕の腕をガシリと掴んだ。
そして霞くんにボヤキをひとつ。
「カスミ、オマエはもう教室戻っていいわ」
「え?」
「テラセに興味が湧いた。俺一人でこいつをビシバシ鍛えあげることに決めたから」
目を見開いて固まる霞くんを置き去りにして、僕の腕をぐいぐい引っ張っていく奏多くん。
「ちょっと奏多くん、僕をどこに連れて行く気ですか?」
強制連行って言葉がぴったりなほど、僕は強引に引きずられていますが……
「なぜ俺に敬語?」
だって奏多くんは、上から物申すときの威圧感がすごくて……
「壁を感じる。鳥肌立つからやめろ」
「あっうん、わかったよ」
これ以上にらまれたくないから、言うことを聞くよ。
我が道を行くがごとし。
まっすぐ前だけを見て進む奏多くんの前に、両手を広げた霞くんが立ちはだかった。
僕の足が歩みをやめ、僕の口から安どのため息がこぼれる。



