上品な笑顔を浮かべた霞くんが、奏多くんを軽くいじって
『俺がテラセを最高のライバルに仕上げようと思って』
奏多くんはニヒヒと笑いながら、椅子に座る僕を後ろからハグ。
クラス女子たちが『キャー』『テラセくんが抱きしめられてる』っと黄色い悲鳴をあげ、『萌黄って小動物みたいな顔してるもんな』と、男子たちは意味不明な頷きをコクコク。
いやいや、クラスメイトなんてどうでもいい。
僕の斜め前に立つ霞くんの目が、異常なほど怖くて。
笑っているのに、怒っているのがまるわかりな目で。
霞くん違うの。
奏多くんを霞くんからとろう、なんて考えてないからね僕は。
『テラセって抱き心地いいのな。肉があんまないこの骨っぽさ、家で飼いたい、オマエのこと』
奏多くんはさらに力を込めてギュッ。
力が強すぎて逃げられない。
『奏多は萌黄くんのこと、テラセって呼ぶようにしたんだね』
ニコニコなのに声が低い霞くんが、なんか怖くて。
奏多くんお願い、バックハグやめて、今すぐ離れて。
テニスやるから。昼休みにテニスコートに行くから。
『今日の昼休み……テニスを……僕に教えてください……』
奏多くんと霞くんのそばから一秒でも早く逃げたかった僕は、しぶしぶテニス練習に同意してしまったのでした。



