『人って関わってみないとわかんないもんだなって、自分のガチガチな固定観念にメスぶっ刺したてただけ』
『?』
『上目遣いのキョトンやめろ。襲われるぞ俺に』
『襲う? 僕を?』
『冗談だって。ライオンに食べられそうになってるヒヨコにしか見えねー。マジで沼るわオマエ』
大きな手の平で、僕の髪の毛をワシャワシャしないで。
と言えなかったのは、いつも吊り上がった奏多くんの目じりが垂れさがり、楽しそうに笑っていたから。
凛々しいワイルドフェイスが笑うと幼い感じに崩れるところが、奏多くんの魅力なのかもしれないな。
霞くんだけじゃなく、同級生男子が奏多くんに群がる理由がわかる気がする。
なんて、強面奏多くんのギャップに引き込まれている場合ではありませんでした。
お昼休みのテニスは断らなきゃ。
奏多くんと霞くんは、いつも二人でお昼を食べている。
僕が奏多くんをとったと、霞くんに勘違いされたくない。
これ以上嫌われたくない。
『あの……昼休みは……』
予定があると嘘を吐き出そうとしたが、奏多くんが陽気に片手を上げたから僕の口が固まってしまった。
彼の熱い瞳が見つめる先を、目で追いかける。
『なんで朝から、奏多が俺のクラスにいるの?』



