『もしかして……テニスを……僕に教えてくれるとか?』
『ありがたいだろ? 俺に感謝しろ』
次の授業が終わったら、僕は奏多くんとテニスをしなきゃいけないの?
うそだよね?
『ラケットとか……持ってないし……』
『貸してやる、俺の予備』
うっ、結構ですなんて言えない雰囲気。
今週末にテニスコートを借りて練習しますから。
硬式テニス経験者の父さんにしごいてもらいすから。
それで勘弁してください。
『でも……奏多くんのお昼休みの時間が減っちゃうよ……』
『もしかしてオマエ、俺とテニスしたくない?』
バレてる!
笑顔でごまかさなきゃ。
『ううん、そういうんじゃないよ。県大会優勝した奏多くんに教えてもらえるなんて光栄すぎて、なんか申し訳ないなって。奏多くんだって自分のために昼休みの時間を使いたいだろうし』
『オマエ、いいやつだな』
『え?』
『霞が目で追ってる理由、わかった気がする』
『ん? 今なんて言ったの?』
急に声のボリュームが小さくなったから、全然聞き取れなかったんだけど。



