いつの間にか霞くんの家の近くのバス停に到着していたんだと、窓の外の景色を見て気づく。
次にこのバスがたどり着くのは、僕が降りるバス停。
僕は霞くんを追いかけるのを諦め、座席にお尻を落とす。
リュックからパスケースを取り出さなきゃとわかってはいるものの、手が拒んでいる。
霞くんのことも気になるし、受け取った小箱の中身も気になって気になって。
真っ白な小箱の蓋を持ち上げてみる。
中に入っていたものは――
薄くて丸くて金色で、カラフルなひもがついていて……
って、これは金メダルだ。
メダルの表面にはテニスをしている二人組の姿が彫られ、裏には優勝の文字が。
霞くんと奏多くんのペアで勝ち取った、テニスの県大会優勝メダルで間違いない。
なんで霞くんは僕にくれたの?
箱を手渡しながら『約束だったから』と言っていたよね。



