久々に湧き上がった使命感が懐かしい。

 小6までの僕は、自分の命より霞くんの命が大事だと思って生きていた。そう思い込んで疑わなかった。

 弱すぎる自分が霞くんを(あが)めすぎていたせいで行きついた、依存よりもヤバすぎる執着だったんだと、霞くんと離れてみて冷静に分析をしたけれど……

 月日が経ても霞くんから離れても、僕の核は変わっていないんだな。

 何かあった時はまた、僕が霞くんを守るから。


 6年前の古傷がうずく。

 右腕全体が鈍く痛みだし、大好きな人との唯一の絆を服の上から優しく撫でてみた。

 大好きな傷跡を撫でているのに、微笑むことができない。

 霞くんに避けられている日々がつらくて、みじめで、もう一度笑いかけて欲しくて、でも現実はそんなのありえなくて、唇を噛みしめながら手の平で何度も何度も古傷を愛でる。

 
 ひきつった顔を霞くんに見られないようにと、上半身を窓の方にひねった時だった。

 頭上から抑揚も感情もない、無機質な声が降ってきたのは。


 「痛むの?」