☆輝星side☆


 誰か教えてください!

 これはいったい、どういう状況なんでしょうか!


 揺れと睡魔がタックを組み襲ってきたので、僕は抗えず寝てしまったんです。

 バスの前方のひとり席で。

 それはいつものこと、そこはいいとして。


 いま僕は目を覚ましました。

 脳がボケボケのまま、座っているシートの左横を見ました。

 僕が着ているのと同じ制服のスラックスが、瞳いっぱいに映っています。


 感じる気配と普段のバスの閑散状況から、このバスに乗っている客はほぼいないと推測できるんです。

 後ろなんて振り向けないけれど、席はガラ空きで間違いない。

 それなのにですよ、わざわざ僕が座る隣の通路に立っている人がいるんですよ。


 こっ、この人は……


 足の長さと細身のシルエットという情報だけで、相手が誰なのか特定できてしまう自分が怖い。

 彼の肩に下げられたラケットケースが目に入った。

 人物特定の決定的証拠。