人に好かれる才能を持つ輝星に対し、鈴木流瑠さんも人気者という点ではひけをとらない。
気持ち釣り気味な目もと。
凛とした黒い瞳。
ストレートで綺麗な黒髪は前髪と一緒に高い位置で結われ、一見性格がきつそうなポニーテール美女に見えるのだが、見た目と性格のギャップに沼ってしまう生徒は数知れず。
困っている人を見かけた瞬間に猛ダッシュ。
『手伝うよ』
『こんな重い荷物、職員室から一人で運んできたの? 偉すぎ』
『お礼なんて全然いらないいらない。あっ、じゃあこうしない? 今度校内で私と目が合ったらニコッて笑って、それがお礼。ねっ、いいでしょ?』
『やった、約束ね』
地声の大きさから、流瑠さんの声しか俺の耳に届かないことが多いけれど、いろんなところに目を向け、いろんな人に笑顔を振りまくところは輝星と同じだなって、俺も流瑠さんを一人の人間として尊敬している。
そう、いい人なんだ。
いい人なだけに俺は苦しいんだ。
輝星が心を許している相手が嫌な人だったら、思う存分憎めるのに。
……なんて、中学に入る前に輝星を突き放し傷つけた俺が、こんなことを想う資格なんてないんだけどね。



